先日、映画『バグダッド・カフェ』を久しぶりに観ました。
アメリカの砂漠にぽつんとあるさびれたカフェに、ひとりのドイツ人女性がふらりとたどり着く。
それが、この物語の始まりです。
彼女がそこでやったことといえば、「掃除」。
そして、間違って持ってきたスーツケースの中に入っていた“マジック道具”を使って、少しずつその場を明るく変えていくこと。
観終わったあと、なぜか無性に掃除がしたくなって、
「そうか、自分の人生を動かすのは、特別なことじゃなくて“今あるもの”を見つめることなんだ」と気づかされました。
汚れた部屋は、心の鏡
主人公ジャスミンが泊まることになるのは、荒れた事務所のような部屋。
物が散乱し、掃除が行き届かず、空気もどこか重い——
まるで、その場所にいる人たちの心を映しているようでした。
でも彼女は文句を言わず、静かに掃除を始めます。
ゴミを捨て、床を拭き、整えていく。それだけで、空間が少しずつ息を吹き返し、
そこにいる人たちの表情まで変わっていくのが印象的でした。
手元にあるもので人生は動き出す
さらに印象的なのは、スーツケースの入れ違い。
ジャスミンは誤って、夫のスーツケースを持ってきてしまっていました。
中に入っていたのは、なんとマジックの道具。
「なんでこんなものが…」と思う場面ですが、
彼女はそれを練習し、店で披露することで、カフェを人気スポットへと変えていきます。
つまり、彼女は「そこにあるもの」を活かして、人と場所を変えたのです。
Calling You――心に染みる、あの歌声
この映画を語る上で忘れてはならないのが、主題歌「Calling You」。
砂漠の向こうから誰かに呼ばれているような、
孤独の中に希望が差し込むような旋律が、物語のすべてを包み込んでいます。
映画のストーリーが進む中、
あの歌声が、観ている私たち自身の心にもそっと語りかけてくるようでした。
原題“Out of Rosenheim”に込められた意味
この映画の原題は “Out of Rosenheim”。
これは、ジャスミンが出発したドイツの町「ローゼンハイム」を意味しています。
でもよく考えてみると、「Out of」には
“慣れた場所を出て、新しい場所へと踏み出す”というメタファーが込められているようにも感じます。
誰も知らない砂漠の地で、ジャスミンは掃除をし、持ち物を活かし、
周囲の人々と心を通わせながら、「ここにいていい」と思える居場所を見つけていくのです。
断捨離や人生の再出発にも通じるメッセージ
この映画は、ただの“異国での出会い”を描いたものではありません。
それは、「片づけること」や「あるものを見直すこと」が、人と人生を変えていくというメッセージでもあります。
今の生活にモヤモヤしているとき、人生を立て直したいとき、
あるいは、どこか自分の居場所がわからなくなっているとき——
この映画は、静かに背中を押してくれるような力を持っています。
おわりに:まずは身の回りを整えてみることから
映画を観終えたあと、私はまず机の上を片づけました。
引き出しの奥から出てきた懐かしい道具や思い出の品に触れながら、
「今あるものを活かすって、こういうことかもしれない」と感じました。
掃除をすること、持ち物を見直すこと、それは
ただ物を減らす行為ではなく、心の中にある“自分の居場所”を整えることなのかもしれません。
『バグダッド・カフェ』。
あなたの心にも、きっと何かを呼びかけてくれるはずです。
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